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しっとり系、サクサク系、そしてやさしい系。

 近頃、食パンだけを売る専門店がいくつもできている。テレビ番組で特集され、お客さんが行列を作って買っている。なぜ並ぶのかというと、やはりそれだけの価値があるからだろう。美味しい物を食べると誰だって幸せな気分になる。お肉でも果物でもデザートでも一緒で、みんなその幸せを買うために並んでいるのだろう。
 
 私はパンが好きなので、以前から気になるお店があるとたずねて行って、その時の気分で食べたいパンを選んで買っていた。惣菜パンや菓子パンなどである。
 あるとき、パンが大好きという友人、Kさんから、「私はパン屋さんの評価は食パンの味で決まると思ってるので、初めての店ではまず食パンを買うことにしている」という話を聞いて、「なるほど」と納得し、それ以来、私も真似をすることにした。
 彼女は厚さにもこだわりがあり、切っていない食パンを買ってきて、自分のパン切り包丁で好きな厚さに切って、すぐに冷凍するのだそうだ。
 そして毎日、翌朝食べる分だけを解凍しておき、夜はそれを楽しみに眠りにつくのだと笑っていた。
 どんなに朝早く出勤する日でも、朝食のために十分な時間をとれるように起きて、珈琲も丁寧に淹れるのだそうで、美味しいパンを食べる喜びが彼女の生活のある種の支えになっているのだった。
 
 折しも世間は食パンブームである。
 話題になっているお店が私は気になってならない。でもその場所は確認できても、私はなかなかパンを買うことができない。そのためだけに時間を使うというのができず、何かのついでにと考えてしまって、いつもお店の前の売り切れの札に「あーあ」と溜息をつくことになる。これは、どうしても手に入れるぞ、という情熱、気迫が足りないせいだと思われる。
 けれどそういう流行のものを必ず手に入れる、というタイプの人がいて、そういう人はだいたい世話好きで、誰かを喜ばせたいという愛情に溢れているようなところがあって、こんな私でも、そういう方々のおこぼれにあずかる機会があるのだった。
 
 私は有名店の食パンをわりと食べている方だと思うけれど、それはすべて心優しい方々からいただいたものである。専門店ではないお店の場合は自分で行ってもたいてい買うことができるので、大阪、神戸、京都あたりのパン屋さんへは仕事帰りに寄ったりしている。
 そのなかで、私が食パンについて感じたことは、味や食感に三つの系列があるということである。
 いわゆる有名専門店の食パンは、高級な材料を使ってるなー、と実感できるような、しっとり感、もちもち感がある。
 フランスパンの美味しいパン屋さんが作る食パンはサクサクしていて、耳の部分にほんのり塩味がする(気がする)。
 初めはこの二種類かと思っていたけれど、もう一種類、やさしい系というべき食パンの系譜があることに気がついた。
 これは、しっとりとかサクサクとか、めだった特徴がない、ごく普通の、でもとってもやさしい味と食感のパンである。
 Kさんから、「私のおすすめ」といただいた彼女のお気に入りの奈良のお店の食パンはこの“やさしい”系のものだった。食後感に派手さがなく、穏やかで、控えめで、上品な美味しさがある。まさにKさんらしいパンだった。
 
 個人的にはしっとり系とサクサク系が融合したような、大阪肥後橋にあるパン屋さんの食パンが私は好きだけれど、どのお店のどの系統のパンもそれぞれに美味しくて、あとは食べる人の好みに任せるしかないと思われる。
 ひとつのお店で違う種類の食パンを作っているところもあり、製作者の探究心には頭が下がる。おかげで私達は幸せを買える幸せを味わうことができるのである。
 
 今、私が気になっているのは、テレビで見た神戸の食パン専門店である。
 場所的には神戸の仕事帰りに寄れるとこにあるのだけれど、焼き上がり時間が決まっていて、それがどうにも合わない。早すぎるか遅すぎるかする。
 時間を調整してなんとか自力で手に入れるか、誰か親切な人の出現を待つか、悩むところである。
 

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