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Y君の夢

 私は寝ることが大好きだけれど、昼寝はあまりしないようにしている。なぜなら昼寝をすると必ず悪い夢を見るからだった。

 先週の土曜日、普段は休みの日に早朝から出かける仕事がはいった。しかも緊張感が伴う仕事で、無事に終えたあと私は身心ともに疲れて午後3時頃に帰宅した。
 家でもやらなければならないことがあったけれど、ホッとするとむしょうに眠たくなった。ここで1~2時間眠ったら、頭の中がリセットされて、やる気が出そうだな、という感覚があった。それで誘惑に負けて昼寝をしてしまったのだった。
 
 やっぱり夢を見た。でも今回は悪夢ではなく、Y君という、大学時代の友達が登場する夢だった。
 走っている軽自動車の後部座席に私はY君と並んで座っていた。助手席に誰かがいたのは思い出せないのだけれど、運転席にも二人の共通の男の友達がいた。
 私はとてもうきうきとした気持ちでY君と喋っていた。何を話していたのかは忘れてしまったけれど、時々、運転席の彼も話題に加わっていた。三人ともハタチ前後の頃の姿だった。私はこれは夢なんだろうな、と夢の中で思っていた気がする。
 Y君と喋っているうちに、私はこの人のことが物凄く好きなんじゃないか、という気がしてきた。二人の間の空気が色づいて小花が舞っているようだった。相手も同じ気持ちだという確信ぽいものがあって、相思相愛って、これ? と私は思った。そういう感覚を長い間忘れ去っていたので、心の中でひどく戸惑っていた。その流れで二人の指が触れそうになり、ビクッとしたところで目が覚めた。
 
 
 目覚めた後、私はしばらくびっくりしていた。Y君とはそんなに親しい間柄ではなかったし、あまり話したこともない。どうしてあんな夢を見たのか不思議でならなかった。
 大学時代の友人達とは毎年、一月初めに新年会で顔を合わせる。私は行ったり行かなかったりだし、Y君もそうなので、彼とは数年に一度顔を合わせる程度だった。
 今年の新年会は先輩のMさんの自宅で行うことになっていて、日程の調整のために、私はY君を含めた数人と連絡を取った。
 みんなの都合のいい日に開催が決まったけれど、寸前になって幹事のMさんが自転車の事故でケガをして、新年会は中止になった。場所を変えようか、とは誰も言い出さなかった。
 私はそのことをY君に連絡した。
 ただ用件だけをメールに書いて、近況などを添えることもしなかった。
 残念ですね。また来年。
 そんなやりとりはあったかもしれないけれど、それ以上続けることのないあっさりしたメールだった。
 Y君は昨年の新年会に来ていて、そのとき、命に関わるものではなかったけれど手術をしたということで、ずいぶんと痩せていた。回復途中のような印象だった。それで気になっていたのだろうか。
 
 自分の心の中には水平線のような横線が一本あって、その上側が自分の考えていることとして頭に送信されるもの、と私は思っている。
 その線の下側が潜在意識で、考えている、とか、気にしている、とは自分で気がついていない部分で、その割合は下のほうが断然広い、という気がしている。
 夢に現れるのはその部分からのもので、まったく意識していないものが出現して驚かされることがある。これは今までの経験でわかっている。でもY君のことを、そんなに気にしていたのかな、と思うと、やっぱりとても不思議な感じがした。それでその夢のことを今も忘れないでいるのだった。
 
 目が覚めると夕方の6時前だった。時間はまだたっぷりとある。次第に頭もスッキリとしてきてやる気が湧いてきた。
 
 来年の一月までY君に会うことはないだろう。
 そのときには私は夢のことは忘れているかもしれないし、もし覚えていたとしても何か誤解があってはいけないから彼には伝えないでいて、伝えない自分を愉しむことにしよう、と今は考えている。

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