決められない!
わりと何でもスッパリ決めるほうなのに、迷い出すとどうにもできなくなることがある。
8月の初めに息子が友達の結婚式に出席した。
息子は別に暮らしているが、礼服は私の家のタンスに吊したままだった。
それで式の前夜から泊まり、当日はうちから出かけて行って、うちに帰ってきた。
その結婚式の引き出物は、後から送られてくるという形式になっていた。息子の住所は実家のままになっている。
「受け取っといて」
と言い残して息子は自分の家に帰って行ったのだった。
数日後に届いた箱には、洋菓子や海苔など引き出物一式が入っていた。息子に連絡したら、私に全部くれるという。
お祝い用の新札や袱紗も私が用意したし、前夜に大騒ぎしてネクタイを探すのも手伝ったし、まあ、このくらいはいいかな、と思って、ありがたく貰うことにしたのだった。
その引き出物一式の中に、カタログが入っていた。
分厚いカタログで、ありとあらゆる物が載っている。
その中から欲しい物をひとつ選んで、番号をハガキに書いておくると、それが送られてくるという仕組みで、最近の結婚式ではほとんどこれが主流になっているようだ。
受け取るほうが、自分に都合のいい、好きな物を選べるというのが利点だし、送るほうも考えなくて済む。
このカタログの中から、あなたの欲しい物をひとつ差し上げますよ、と言われたようなもので、私はうれしくなって時間をかけてじっくりとページをめくった。
一番欲しい物を選びたくて、いろいろと考える。絶対に必要な物で、お得感のある物でなければならない。よそで安く買えるような物はダメだ。
それに、自分でお金を出すなら買わないけどタダなら欲しい、というような物も候補に加わってくる。
これがなかなか決まらない。
今までは、ちょうど買い換えたい時だったのでお洒落な鍋をもらったり、好きなピーターラビットの食器セットや、スプーンやフォークのセットをもらったりした。
今回は特にそういう物がない。
ウエッジウッドのマグカップ、香蘭社の小皿セット、レトルトの牛タンシチュー、今治タオル……。うーん、決められない。
ピーラーの切れ味が落ちてきていたことを思い出したが、これは記載がなかったし百円均一の店で買えそうだ。
迷った末にようやく二つに絞った。
ひとつはLEDライトの付いた鏡で、化粧のときに、くっきりはっきり見えるというので使ってみたい気がする。
もうひとつは、キャンプ用の椅子、ラウンドチェアである。これは畑仕事の休憩や、玄関先で孫を遊ばせるときに使う。収納できるし、ひとつあると便利かな、と思う。
なんとかここまで辿り着いたけれど、いつになったらハガキを出せるのかわからない。ゴールは遠いような予感だけがある。
まだまだ決められない。
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