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Swatchの時計

 大学生の頃、Swatchの時計を初めて目にした。
 大阪の心斎橋に店があって、若者でにぎわっていたのだった。
 当時の私は高校の入学のときに親から買ってもらったSEIKOの腕時計をひとつ持っていて、それを大切にして使える限り使い続けるものだと考えていた。
 スイス製だというSwatchの時計はプラスチックで出来たものなど多種多様なデザインがあり、とてもおしゃれだった。
 こんな時計があるんだな、と驚いた。用途に合わせて時計を着替える、という文化をそのときに知ったのだった。
 お店の前を通るたびに覗いて、さまざまな時計の中から、自分だったらどれがいいかな、と選んだりしていたが、自分で買おうとは思わなかった。すごく高価ということもないが安いものでもなかった。贅沢品のように感じていた。
 
 その後、私は結婚して子どもができた。息子が中学生くらいの頃に、二人で偶然、Swatchの店の前を通りがかって中に入ったことがあった。
 そのときも、ポップなデザインの時計が並んでいた。
 「いつか彼女ができたら、こういうのをプレゼントしてあげるといいのよ」
と、それらを見ながら息子に言った覚えがある。
 私だったらすごくうれしいだろうと思ったからだった。
 その言葉は息子の中にインプットされたようで、その後、彼女ができるたびにSwatchの時計を贈っていたというのを聞いた。
 
 4日前に私は誕生日を迎えた。
 毎年の恒例で、姉が、誕生日プレゼントは何がいいの? と聞いてくれた。
 いつもはそのときに必要な物をリクエストするのだけれど、今年は特に思い当たるものがなかった。
 それで考えているうちにSwatchの時計のことを思い出したのだった。
 ずっと欲しいと思いながら、自分で買うことはできないものだった。
 店は今も同じ場所にある。
 心斎橋駅で待ち合わせしてお店に行き、二人であれやこれやと言いながら選んで、姉が買ってくれた。
 思っていた以上に、胸がジーンとした。
 40年越しに、ひとつの願いが叶ったのだった。
 

タグ:Swatchの時計
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