図書館通い
図書館が家から遠いというのは不運なことだと思う。子ども時代はバスと電車を乗り継いで1時間ほどかかる場所にあり、高校生になるまで思うように図書館を利用することができなかった。幼い頃に歩いて行ける距離に図書館があったなら、私の毎日はどんなに豊かなものになっていただろうかと残念である。
今は自転車で15分ほどの距離だけれど、なかなか遠く感じる。返却期限日が土砂降りの雨だったりするとかなり頑張らないといけない。しかしそれでも仕事の合間を縫ってせっせと通っているのである。
初めて図書館というものを知ったのはいつだったか忘れてしまったが、私はそのシステムにものすごく感動した。
―このたくさんの本を全部借りることができるのだ。それも無料でー
今も図書館のなかに足を一歩踏み入れると同じ感慨を抱く。そして胸が高揚する。どの本も読みたい。文芸書だけでなく雑誌や旅行ガイドもある。画集もある。漫画もある。料理の本もある。辞書もある。背表紙を見ているだけでわくわくしてくるのである。
原稿を書いているときは、その資料となる本をネットで検索して最寄りの図書館へ取り寄せる。
これはできれば執筆が終わるまで借り続けたい。本の貸出期間は2週間で、次の予約がなければあと2週間延長することができる。この操作はネット上でできるが、延長期間が終わると図書館まで行ってカウンターでいったん返却し、また借り直す手続きが必要となる。
資料で借りる本は古いものが多くたいてい続けて借りられるので、同じ本が数か月間、私の手元にあることもある。
ところが私が現在執りかかっている小説にはフランス刺繍についての資料が必要で、いつもと同じように図書館で7,8冊の本を借りているのだが、そのうちの1冊が最新版の人気のある本なのである。けれども私はどうしてもその本が借りたい。
初めて借りようとした時も貸出中で予約待ちの表示があった。それに予約をして待ち続けた末に手にすることができたのだったが、その段階ですでに次の予約が入っていた。
なのでその本を借りるときに、
「次の次の予約をすることはできますか?」
と聞いてみたが、自分が借りている本の予約はできないということだった。確かに道理である。
それで2週間後に返却カウンターに持って行き、その場で予約をした。借りている他の本を一緒に持って行き、いったん返却して借り直す。しばらくすると予約の本が届いたという知らせが来る。取りに行ったついでにまた他の本も一緒に借り直す。期限日が異なると二度手間になるので重い手提げを何度も運ぶことになる。
予備校生だった頃は毎日、大阪の夕陽丘図書館に行っていた。時々は天王寺図書館にも行った。自習室は順番待ちが必要で朝早くから並んだ。夕陽丘図書館の自習室は地下にあったように記憶している。灰色の壁の閉じられた空間だったけれどとても集中できた。昼は館内の食堂で素うどんと白飯のうどん定食を食べた。本棚が並ぶ二階の部屋にも机があり、そこに座る日もあった。現代文や古文の問題集に一部だけ抜粋されている文章を読んでいるとどれも興味深く、大学に受かったらこれらをきちんと読みたいと強く思ったものだった。
どちらの図書館も今はもうない。
これほど想うのだから、図書館が好きな自分を好きなだけというのでもないようである。
いつか近くに住める日がやってくるだろうか。
私の家の近くには大きな図書館が二館あります。毎日弁当持ちで通館(?)している高齢者をよく見かけます。夕陽丘図書館って、名前だけでも行ってみたくなりました。今はもう、夢と青春の幻の図書館なのですね。
by 花設計士 (2016-07-13 10:00)
ヒトリジメできないように無粋な鉄枠のある公園のベンチでビール片手にソラヨミしながらつい白河夜船。バチが当たり 自分で革装したソイツを置き忘れてあわててもどってみたけれど!
それはさて置き どなたか 吉田健一に関心のある方おられないかしらん。豚舎に20冊くらいホコリをかぶりながら探し人をまってるのだけど........
たしかに、その人にが執着する本はあるわね、あなたの その本みたいに。
by 浮薄老醜居士 (2016-07-15 13:37)