チーズナン

　太る体質か痩せる体質か、というと太る体質であることに間違いない。母も太り気味だったし、父も姉もそうだ。父は糖尿病と高血圧に苦しんできた。姉もその予備軍だと言われているという。

　ちょっと油断すると私もそうなりそうな気がする。

　私はずっと朝晩に体重を計っている。少し食べ過ぎたかな、と思うとすぐに数字に出る。特に夕食が外食のときは気をつけないといけない。

　友人の中には、しっかり食べないとどんどん痩せていく、という人がいて、彼女はお母さんもそういう体質なのだそうだ。いつもチョコレートを持ち歩いて、気がついたら食べるようにしていると言っていた。

　確かに芸能人のなかにも痩せ過ぎではないか、という人がいて、ふっくらとした人のほうが幸福感があるように感じる。

　だから強い痩せ願望があるわけではないのだけれど、あまり野放図にもしたくない。〝ふっくら〟くらいでとまっていたい、と思っている。

　

　体重が増えた翌日からはいろいろなことに気をつけて、少しずつ控えめにして、数日かけて元にもどすようにしている。本当はもう少し減らして身軽になりたいのだけれど、元に戻るとホッとしてしまう。

　栄養のあるものをきちんと食べないと免疫力が落ちるのではないかと思うので、極端な食事制限はせず、夕食だけを加減するようにしている。意識して身体を動かすようにもしている。

　

　先日、久しぶりに夫と映画を観に行った。

　その後で、少し早かったが晩ご飯を食べることになった。そうなることがわかっていたので、昼を少なめにしていた私は、ものすごくおなかが空いていた。

　何を食べる？　何食べたい？

と聞いても、いつも夫は、なんでもいいよと言う。こういう場合はたいてい私が決めることになる。

　いくつかお店を見てまわって、インド・ネパール料理レストランでカレーを食べることになった。

　そこにあったチーズナンのセットを見て、食べたくなったのだ。

　

　こういうエスニック料理店というのは、各町に一軒ずつあるように感じる。たいてい現地の人がシェフをしている。私はわりとよく行くほうだけれど、チーズナンを知ったのは２，３年前のことだった。

　いつもは普通のナンを食べていたのが、偶然、チーズナンを口にして、その美味しさに本当にビックリした。チーズナンというのは名前の通りナンの中にチーズが入っているのだけれど、なにしろチーズの量が半端じゃなくすごいのだ。初めはその店だけかと思っていたら、どこのお店でも、一様にチーズの量が多くて、おそらく、現地で、そういうものとして食べられているのだろう。それ以来、チーズナンは私の好物のひとつになった。

　

　映画の後で入ったお店は初めてだったけれど、小ぶりのタンドリーチキンとキーマカレーに、巨大なチーズナンがセットになっていた。これにもチーズがたっぷりと山のように入っていて、私はもりもりと平らげてしまった。

　同じものを頼んだ夫は食べきれず残していたので、それまでも食べた。

　おなかがパンパンになってはち切れそうだった。

　本当に美味しくて、幸せな時間だった。

　

　そしてその夜、私がのった体重計は今までに見たことのない数字をはじき出した。

　今はそれを、少しずつ少しずつ、ひたむきに調整する日々が続いている。

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