八月の波
八月には大きな波がやってくる。
私はサーフィンをしたことはないけれど、ボードを脇に浜辺に立っている気分だ。
そうして沖をみつめている。やってくる波を待っている。
いくつかある、私の、年に一度の仕事がこの月に集中している。
売れっ子作家みたいにたくさん原稿の締め切りを抱えているというわけなのだ。
それに加えてお盆休みがある。
父の一周忌は家族だけで済ませたが、初盆には親戚の人たちがやってきそうだ。
もちろん畑の草抜きもある。
その前に娘一家(夫婦と幼い孫二人)が帰省してくる。
10日間、我が家に滞在する予定だというので、その間は、主婦、母親、祖母役に徹しなくてはならない。
この期間は早寝しなければ身が保たないので、自分の時間はほぼとれない。
毎年のことなのでわかっている。
今年はかなり早めに原稿に着手した。コロナの七波で家に籠もることになったので時間ができたのだった。お盆の後に締め切りがあるものは先延ばしにして、それ以外は締め切り日の早いものから順番に仕上げていくことにした。
そうやって、早め早めにやっていくけれど、なかなかサクサクとはいかない。
文章作品については完成を自分で判断するので、いつまでも手放す踏ん切りがつかず、ずるずると引き摺ってしまうのだ。
特に文学賞の選評については気を遣う。
自分の抱いた評価をきちんと伝えられているか、人それぞれの読み方があると思うので、それが説得力のある文章になっているか、ということである。
しかも出版される本の初め(選考委員があいうえお順なので)に掲載が予定されている。
今年は受賞者のインタビューと記事を書く仕事もある。
でもこれはお盆の後なので、今は考えないようにしている。
大きな波のうねりが今私に向かってやってこようとしている。
なんとか乗り越えたい。
満足のいくレベルで。